
潰れにくい会社を作る!必要な最低現金預金残高はいくら?
中田先生!最近よくTVや雑誌などで黒字倒産という言葉を目にするんですが、なぜ黒字なのに会社が倒産してしまうんですか?
どうしたんだい、いきなり?
黒字なのに倒産ってなんだか矛盾しているな〜って思って。
それにしてもいいところに目をつけたね。簡単に言うと、黒字倒産してしまう最大の理由は、会社の現預金残高が底を尽きて、会社としての活動ができなくなってしまうからなんだよ。
現預金残高って何ですか?
現預金って言うのは、すぐに使える現金のことだよ。代表的な現預金が現金・普通預金・定期預金、定期積金だね。当座預金もそうなんだけど、最近はあまり見かけなくなったね。
なるほど。会社の貯金ということですね。
簡単に言えばそういうことだね。
つまり、会社の現預金残高が無くなってしまうと倒産してしまうということですか?
そうだね。現預金が無いと支払いも借金の返済も出来なくなってしまうからね。待った無しの状態と言えるね。たとえばちょっと極端だけれども、次のような典型的な黒字倒産のパターンを見てみよう。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
現預金残高 | 100万円 | 50万円 | 0円 | △50万円 | △100万円 |
借入返済金 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | 50万円 |
売掛金回収 | – | – | – | – | 500万円 |
これが黒字倒産するパターンなんですか?
そうだよ。純ちゃんにはこの表がどう見えるかな?
うーん。確かに4月で一旦現金預金残高がマイナスにはなっているけど「5月に500万円が一気に入ってくるからオッケー!」という感じに見えます…。
たしかに財務の事をあまり知らない人から見ればそうなのかもしれないね。でも、よく考えてみてごらん。この会社、3月の借入金返済はどうやって行ったんだろう?
どこかから借金をしたとか…?
そう考えるのが普通だよね。でも、もしどこかから借金をしたのであれば、3月の現預金残高に借りたお金が計上されていないとおかしいよね。
確かにそうですね…。
つまり、この会社は借金を払えなかったということが、この表から分かるよね。ほら、3月は0円、4月は△50万円、5月は△100万円とどんどん負債が膨らんでいるでしょう?
本当ですね。じゃあこの会社は借金が払えなくて倒産してしまったということですか?
その通り!会社が借入金の返済を約束通りできないことを返済遅延というんだけど、2ヶ月連続して返済遅延を起こしてしまうと、その会社は金融機関から著しく信用を失ってしまうことになるんだ。
そうなんですね。あと1ヶ月待てば500万円の売掛金回収が入ってきて借金が全て返せるのに…なんだか悔しいような、悲しいような。
普通の感覚ではそう思ってしまうよね。この会社のように、未来には資金が入ってくるのに、現預金残高が無くて直近の借金が払えなかったり、会社として活動ができなくなって倒産してしまうことを黒字倒産と呼ぶんだ。毎年平均10,000社が倒産している中で、その約半分を占めるのが黒字倒産。そして、毎年その比率は増え続けているんだよ。

逆に、赤字であっても会社に現預金残高があれば倒産はしないんだよ。
ひえ〜。現預金残高って会社の命運を左右するほど大切なものだったんですね。
そうだよ。基本的には現預金残高が多ければ多いほど、会社は潰れにくくなる。財務力がある会社っていうのは、言いかえれば現預金残高が多い会社とも言えるんだよ。
そうなのですね。てっきり利益を多く出している会社が財務が強い会社なんだと思っていました。
そう思うのが普通だよ。でも、実際はいつ何が起こるかは誰にも分からない。だからこそ、不測の事態が起きた時に柔軟に対応できるように、会社にはある程度余裕をもった現預金残高を用意しておく必要があるんだよ。純ちゃんだって、いつ病気になったり、事故にあったりしてまとまったお金が必要になるかわからないから貯金しているんだろう?
そうですね。(…な、なんて不吉なことを)
そういう意味では、個人も会社も同じということだね。それほど会社が存続し続ける、倒産しないためには現預金残高は重要で、会社の財務上最も重要な指標と言えるんだよ。
実際にどれくらいの現預金残高があれば大丈夫なんですか?なにか目安額のようなものがあるんですか?
そうだね。その会社の平均月商の3ヶ月分以上あれば現預金残高として十分と言えるだろうね。もちろんそれより多ければ多いに越したことは無いよ。現金取引が主で、毎月現金が安定して入ってくる会社であれば月商の2ヶ月分くらいを目安にしてもいいかもしれないけど、介護や医療の様に保険適用ビジネスであれば、売上の入金に2ヶ月程度かかるかかるから、どんな業種であっても最低3ヶ月分は欲しいところだね。
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逆にそれ以下だと黒字倒産の可能性が十分にありえる会社ということになってしまうんですか?
そうだね。通常より黒字倒産のリスクは高くなる。月商の1ヶ月分を割り込んでいればかなり少ないと言えますね。つまり財務が弱い(潰れやすい)会社という事になってしまうね。
この現預金残高の指標を知っていれば、逆に安全な取引先を決める基準にもなりますね。
いい所に気づいたね。現預金残高は財務諸表に出ているから、安全な取引先を選ぶためにも、取引前には心配であれば確認させて貰えばいいよ。取引先が突然潰れちゃって「売掛金を回収できません」なんてこともよく起きるからね。そういった意味ではリスクヘッジになる。
なるほど。勉強になります。
今日教えていただいた内容をまとめると、財務が強い(潰れにくい)会社にするためには、最低でも平均月商の3ヶ月以上の現預金残高を用意しておく必要があるということですね。
中田先生。今日もありがとうございました。
本日のまとめ
- 財務に強い(潰れにくい)企業を作るためには、最低月商3ヶ月分以上の現預金残高が必要。多ければ多いほど望ましい。