売上規模に合わせた資本金・自己資本比率の考え方

2017/09/15

売上規模に合わせた資本金・自己資本比率の考え方

資本金って、1円の会社もあれば100万円、1,000万円と会社によって額が異なってくると思うんですが、資本金はいくらが適切なんでしょうか?

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これから起業しようという人にとっては悩みどころだね。結論から言うと、いくらでもいいんだよ。

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そうなんですね。

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そうなんだよ。でも、実は数年前までは、有限会社を作るなら資本金は300万円、株式会社なら1,000万円の資本金が必要だったんだ。

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結構な金額が必要だったんですね。

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そうなんだ。だから今よりも会社の設立にお金が必要だった分、株式会社って聞けば、それなりの信用が得られたんだけどね。今では資本金1円の株式会社だって設立できるようになったんだよ。笑い話じゃないけど、2011年11月11日の設立で資本金111万円の会社や、1,111円、111,111円っていう会社を結構見かけたよ。

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逆にそれで話題性を狙う企業とかも沢山ありそうですね。

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そうだね。資本金の数字に意味を持たせることができるから、それでブランディングすることも可能だよね。たとえば、焼肉店を経営する会社であれば、2,929,292円とか。

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そんな資本金の会社が本当にあるんですか?

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これは私が勝手に例としてあげたものなので、実在するかはわかりませんが、要するに資本金の数字に意味を持たせてブランディングしている会社もあるということなんですよ。

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なるほどですね。そもそも、資本金って企業にとってどういうお金なんですか?

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そうだね。資本金はいくらが適切かどうかを説明するまえに、まずは資本金について学んでおこう。資本金というのは、会社を設立するために集めた資金のことなんだ。株式会社であれば株式を発行して調達した資金がこの資本金にあたる訳だね。ただ、創業時は他者からの出資を得るのは信用上難しい。だから最初の資本金は自己資金で賄うという人がほとんどなんだよ。

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なるほどですね。じゃあ、資本金は会社スタート時のいわゆる軍資金ということですね。

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そうだね。例えばラーメン屋さんをオープンさせるのであれば、店舗に機材に内装工事の費用がかかるよね。この費用がいわゆる資本金から捻出されるわけなんだ。だからたとえ資本金が1,000万円であったとしても、実際にこのラーメン屋さんの口座に1,000万円が入っているわけではないんだ。

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企業が活動するために使った過去の資金も資本金に含まれているから、資本金1,000万円のラーメン屋さんが、今現時点で1,000万円を口座に持っているわけではないということですね。

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その通り。だからどれだけそのラーメン屋さんが利益を上げたとしても、増資をしない限り資本金の額は一定なんだよ。

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そう考えると資本金が1円の企業はどうやって活動してるんですか?会社を設立するためには手続きとかで色々費用などがかかると思うので、到底1円では賄えない気がするんですが…。

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良い所に気づいたね。確かに2006年の法改正から資本金が1円以上であれば会社が設立できるようになったんだけれど、設立登記の手続きの段階ですでに1円以上の資金が必要になるから、結局、役員借入金として資金を入れてもらうことになっちゃうんだよ。

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役員借入金ですか?

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役員借入金は、いわゆる会社が役員から借りているお金なんだ。たとえば次のような会社の例を見てみよう。資本金は1円なんだけど、本来なら活動資金として500万円必要だった場合は、次のように残りの499万9999円を役員借入金として会社の活動資金に当てるんだ。

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・資本金:1円
・役員借入金:499万9999円

こんな面倒くさいことをするなら、最初から資本金を500万円にしちゃった方が良くないですか?

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確かにそうかもしれないけど、これはこれでメリットがあるんだよ。

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一体どんなメリットがあるんですか?

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株式会社の場合、もし資本金を500万円にしたとすれば、今まで自分で貯めこんできた通帳の残高が500万円減少したことになるよね。

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なるほど。全部資本金として入れてしまうと実際の手元資金が残らなくなってしまうということなんですね。

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その通り。一方で1円資本金にすると、自分の手元資金が潤沢にあるので、会社経営に必要な資金を役員借入金として投入することもできる。それに、個人の生活費を手元資金から捻出できるので、会社の経費となる役員報酬が発生しないんだ。結果的に会社の経営が赤字になるリスクが低くなるんです。

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そういった資金繰りが柔軟にできるというのが、いわゆる資本金を1円にするメリットなんですね。

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そういうことになるね。ただもちろん資本金1円にするデメリットもいくつかあるんだ。

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例えばどんなことがデメリットになるんですか?

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そうだね。黒字決算ではなく赤字決算を組んでしまうと、即、債務超過になる可能性が高くなってしまうのが資本金1円のデメリットなんだけど分かるかな?

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すいません。解説をお願いします。

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OK。まず債務超過の意味は分かるかな?

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はい。会社の資本金よりも繰越損失が多い状態ですよね。

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そうだね。たとえば資本金1円の貸借対照表を考えてみよう。まず貸借対照表は次のようになるよね。

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でも、当然1円では会社設立費用も捻出できないから、経営者自身か、もしくは親族などからお金を借りるよね。今回は500万円を経営者自身から借りたとしよう。そうすると貸借対照表は次のように変化するよね。

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そこでもし、この会社が250万円の赤字決算になってしまったとしよう。そうすると貸借対照表はまた次のように変化するよね。

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この貸借対照表から見ると、欠損金は250万円。会社の資本金は1円。この時点で欠損金の方が多いので債務超過になってしまいます。

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本当ですね。

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では、次に500万円を資本金として会社を設立した場合を考えてみてください。先ほどの例では、経営者は資本金を1円にして、経営者自身から500万円を会社に貸し出しているので、経営者自身は500万を持っているということになります。そのお金を今回は資本金に全て回した場合、そして同じ赤字決算を被った場合にどうなるか、という例です。貸借対照表は次のようになります。

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資本金が500万円あるので、借入金は0円と仮定しましょう。同様に、250万円の赤字決算になってしまったとすると貸借対照表は次のように変化します。

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あっ!

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気づいたかな。この場合には会社の資本金は500万円、欠損金は250万円になる。欠損金よりも資本金の方が大きいから債務超過にはならないんです。

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なるほど。資本金1円の場合には、手元資金を多く残せて柔軟にやりくりできる分赤字になるリスクが低くなる。でも、実際に赤字になってしまうと即、債務超過になってしまうリスクがある。一方で資本金に手持ち資金を全額入れてしまうと、手元資金がなくなってしまうから赤字になるリスクが高くなる。そういうことですね。

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その通り。同じ資金であってもそれを資本金に回すか、それとも手元資金として残すかによってこれだけ変わってくるということが分かってくれればOK。まあ、これはあくまで説明用の極端な例だから、本当はもっと色々な経費とかを具体的に考えていかなくちゃいけないんだけどね。

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なんだかどちらも一長一短で、資本金をいくらにすればいいかがなんだかよく分からなくなってきました・・・。

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資本金をいくらにすればいいかは次に解説するから大丈夫。ここでは少額資本金のメリットやデメリットをしっかり理解してくれればOKだよ。

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ありがとうございます。なんとか頑張ってついていきます。

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ちなみに、例えば純ちゃんの前に資本金1円の会社と資本金1億円の会社があったとします。谷もちゃんはどちらの会社と取引したいかな?

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それはもちろん資本金1億円の会社ですよ。1円の会社はなんていうか…ちゃんと経営してるのかな?って悪いイメージがします。

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まさに今純ちゃんが思ったイメージも、資本金1円のデメリットなんです。銀行からの融資が受けにくくなったり、企業としてちゃんとしてないイメージが付いてしまうから、それがデメリットにもなってしまうんだ。

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そうなんですね(驚)

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表1,資本金1円のメリット・デメリット
メリット デメリット
・資金繰り対策が柔軟にできる
・手元資金が潤沢にのこるため、赤字決算になりにくくなる
・企業としてのイメージが悪い
・赤字決算を組んでしまうと即債務超過担ってしまう可能性が高い

実際には資本金はどれ位が適正なんでしょうか?

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一概には言えないけれど、財務的に考えると売上高とのバランスによって額は決めた方がいいね。たとえば最初に資本金100万円位で創業したとしても、売上高1億円を越える頃には資本金は少なくとも500万円に増資しておきたいね。もっと言うと売上高3億円を越える頃には1,000万円にしてほしいし、5億円を越える頃には2,000万円、10億を越える頃には3,000万円にしてほしいね。

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表2,資本金の目安
売上額(円) 資本金額(円)
1億 500万
3億 1,000万
5億 2,000万
10億 3,000万

「売上高がいくらなら資本金はいくら」といった基準のようなものがあるということですか?

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明確な基準があるわけではないよ。ただ資本金の額は自己資本比率が極端に下がらないような額にしておかなければならないんだ。

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自己資本比率ですか?

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そう。自己資本比率って言うのは、総資産のうちに占める自己資本の割合で、資本金や繰越利益剰余金が多いと高くなるし、逆に借入金が多くなったり利益が少なくなったり、赤字だったりすると下がるんだよ。

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じゃあ、自己資本比率が高ければ高いほど借入金などの負債が少なくて、低ければ低いほど、借入金に頼る割合が高いということですね。

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そう!自己資本比率の値は、その企業の健全性や体力などをみる一つの指標なんだよ。

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ということは当然、無借金経営の自己資本比率が高い方がいいんですね。

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一概に高ければいいってものでもないんだよ。たとえば資本金100万円で会社を設立した時には、自己資本比率はいくらになるかな?

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もちろん100%ですよね。

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その通り!じゃあその会社がいきなり9,900万円を借入れたとしよう。そうするとこの会社の現預金残高は1億円、その内9,900万円を借入れているという状況です。この場合の自己資本比率はどうなると思いますか?

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1億円のうちの100万円だから…1%しかありません。

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そうこの会社は自己資本比率が1%と極端に少ないんだよ。では、続いてもう1つ質問するよ。現預金残高100万円の会社と、1億円の会社、どっちがより潰れにくい、財務が強い会社と言えますか?

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もう大丈夫ですよ!財務の基本は現預金残高なので、1億円の会社の方が潰れにくい会社です。

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素晴らしい!じゃあ最後にもう1つだけ聞いてもいいかな?現預金残高1億円の会社の自己資本比率は何%でしたか?

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えっ…1%です。財務は強くても、自己資本比率は低すぎるからあまり健全な経営状態ではない…。なんだか財務が強いのがいいのか、自己資本比率が高いのがいいのか、どっちがいいのか分からなくなってきました。

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そうなんだよ。極端だけど、こう考えると自己資本比率が低くても、財務の目線から見れば強いと言えてしまう。逆に自己資本比率が高くても、財務の目線から見れば弱いと言えてしまう。だから、一概に自己資本比率が高ければいいとはいえないんだ。だから、ここで重要なのは、自己資本比率というのは単なるパーセンテージでしかないということ。「数字ではなくて、その時の会社の状況を見ろ!」ということなんですよ。

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なるほど。自己資本比率はあくまで目安でしかないってことですね。

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そういうこと。設立5期未満の創業期の会社だったり、総資産合計が5億円に満たないような会社は、売上・利益を最大化して、繰越利益剰余金を毎期積み増ししていく。社長個人は蓄財に努めて、定期的に資本金を増やしていくんです。そうすることで事業規模に応じた借入を積極的に行ったとしても極端に自己資本比率が下がることがないんですよ。

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どういうことですか?

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例えばここに総資産1億円の会社と5億円の会社があったとするよね。自己資本比率は共に30%だとしよう。この2社が5,000万円をそれぞれ借入したとしたら、借入後の自己資本率はそれぞれどうなるかな?

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総資産1億円の会社が20%、総資産5億円の会社が27%になります。

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そうなるよね。このように総資産合計が1億円の会社と比べると5億円の会社の方が自己資本比率は下がり方が小さくなるよね。

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そうですね。

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だから事業に応じた借入によって極端に自己資本比率が下がってしまうことを防ぐためにも、定期的に資本金を増やしていく必要があるんです。その指標的なものが先ほどご紹介した売上規模に応じた資本金の額に繋がってくるという訳なんです。

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そうだったんですね。

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本日のまとめ

  • 資本金とは、会社を設立するために集めたお金。資本金の額は1円以上で自由に決めることが可能
  • 資本金が1円の場合、実際の活動費用は役員借入金として社長から会社に貸すという形態で捻出する。
  • 資本金が少額なので、逆に手元に残る自己資金が多い。よって役員報酬を必要最小限に抑えることで、黒字決算の可能性が高くなる。
  • 資本金は事業に必要な借入を行ったとしても極端に自己資本比率が下がらないような額にすべき
  • 自己資本比率とは総資産のうちに占める自己資本の割合で、企業の健全性や体力を見る指標。高ければ高いほど無借金経営に近くなる。低ければ低いほど活動資金のほとんどを借入などの負債に頼っていることになる。

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