
別法人や子会社を設立したいと思った時の財務戦略
中田先生。実は先日、私が財務を学んでいることを知っている経営者の友人から一緒にビジネスをしようと持ちかけられました。私のために会社を作りたいというのですが、その話にのってしまっても大丈夫なんでしょうか?
そうだね〜。じゃあ、一緒にその話にのって大丈夫かどうか、財務的視点から考えてみようか。その友人が経営している会社の売上高はどれ位なんだい?
確か・・・約4億円位だと聞いています。
そうですか。それ位の売上規模の会社を経営していると、いろんな経営者仲間ができてくる。最近話題のビジネスモデルの話が出てきたり、「こんなこと考えているんだけどどうだろう?」なんて話によくなるよね。その時に大切なのが売上高という目線なんだよ。
実際には、売上高がどうあればいいんでしょうか?
以前お話したように、金融機関が会社への融資を判断するポイントの一つに事業規模(売上高)があります。当然事業規模が大きい、つまり売上高は高い方がいい訳です。
具体的に売上高がどれくらいあれば良いのでしょうか?
そうだね。まず第一段階として売上高10億円という目線があります。以前、「売上高と利益は一体どちらが重要なの?」の講義で売上1億円の会社10社よりも、売上10億円の会社1社の調達力の方が高いというお話をしましたよね。せっかく純ちゃんの友人の会社は売上高3億円の壁を乗り越えて、4億円位まで来たのですから、他の会社を立ち上げて売上を分散させてしまうのではなく、そのままその会社の売上や利益を増加させ、いかに売上高10億円に近づけるかということを考えて意思決定をして欲しいですね。そもそも公序良俗に反するような事業だと問題ですが、そうでなければ新しい事業として立ち上げて、事業部別、部門別に管理すればよいだけですので、まずはひとつの会社の売上をあげることに注力して欲しいものです。
ポイント
- 売上1億円の会社10社よりも、売上10億円の会社1社の資金調達力の方が高い
「売上をあげる」方法というのはあるのでしょうか?
ここで言う「売上をあげる」というのは商売繁盛という意味での売上ではありません。仕組みという意味での売上をあげる方法はあります。ここで一つ純ちゃんに質問があります。次の質問に答えてみてください。
中田からの質問
- 例えばA社、B社が協力して事業をしたとします。例えばその事業がセミナー事業だったとしましょう。A社が窓口となってセミナー参加者を集め、参加費を集金し、会場を予約したりする役割、B社は、もっているコンテンツをセミナーで提供する役割です。この時のお金の流れと役割から、A社とB社どちらの方が売上高が高くなると思いますか?集金するのはA社ですので、B社は原価はかからず、A社からいわゆる講演料としてお金をもらいます。
そうですね・・・。セミナー参加者から参加費を集めるA社の方が売上が高くなると思います。B社は原価がかかりませんが、A社が回収したお金の中から講演料が支払われるので、売上高はA社より少なくなると思います。
素晴らしい。その通りです。このように財務的視点から考えると手間(=原価)がかかっても売上が大きくなるA社の立場でビジネスを展開すると、金融機関からの信用と調達力は増していきます。
同じことをやっているのに、その役割分担次第で全く異なる財務になるんですね。
そうなんです。このように仕組み一つで売上が変わってくるので、そういう視点でビジネスを考えることも財務戦略としては大切です。全く違うビジネスをする会社を別に立ち上げたいとか、他の人と一緒にビジネスをやるために会社を別で立ち上げたいという経営者の気持ちはわかりますが、財務的視点から言えば、経営者には売上高をいかに高くする意思決定を貪欲にしていって欲しいですね。
なるほど。売上10億円までは1社の売上を伸ばすような意思決定をすべきということですね。ところで、私はその友人と一緒に会社を立ち上げてしまって大丈夫なんでしょうか?
その質問は財務と全く関係ないので、自己責任で判断してください!
・・・。
本日のまとめ
- 売上規模が増えると、別法人立ち上げの話も出て来やすくなる。もちろん自己責任で立ち上げても良いが、財務視点で考えると売上高10億円位までは1社の売上をいかに伸ばすかを考えて意思決定をしていく方が金融機関からの信用と調達力が増すため良いと言える。
- 売上高1億円の企業10社よりも、売上高10億円の企業1社の信用と調達力の方が高い。