
本店所在地はどこにすべきか?
会社を設立するためには、資本金の他に何が必要だと思う?
オフィスでしょうか?
そうだね。会社を設立する際には、本店所在地を決めなければならないんだ。
今はノマドワーカーの時代、会社の本店所在地ってそもそも重要なのでしょうか?
自宅兼事務所の場合には選択の余地がないですが、自宅以外でオフィスを構えようかなといった場合には「本店所在地をどこにするか?」はとても重要になってきます。
確かに飲食店とかだと、出店する場所で売上が全く変わりますよね。でも、これは飲食店の話ではないんですよね?
そう。これは飲食店の立地戦略の話ではなくて、財務の話だからね。実は、本店所在地をどこにするかで今後の創業融資に差がでてくる可能性があるんです。
なるほど。融資額がオフィスの本店所在地によって変わってくるとなるとこれから創業しようとする人にとっては非常に重要ですね。
そうなんだ。まず、創業融資には日本政策金融公庫の「新創業融資」、そして「保証協会付融資」の2種類があるんだ。「新創業融資」の場合には、どこで融資をうけても額が変わることは無いんだけど、「保証協会付融資」では、本店所在地の場所によって融資額が変わってくる場合があるんだ。
保証協会付融資は、小規模事業者や中小企業が金融機関から「融資」を受ける際に、全国各地にある信用保証協会が「保証人」になり、融資を受けやすくするサポート機関ということは前にお話したよね。
はい。そのかわりに「保証料」を信用保証協会に支払わなければいけないんですよね?
そうだね。しかし、信用保証協会は「保証人」になってくれるだけであって、直接お金を貸してくれる訳じゃないんだ。貸してくれるのは各地域の金融機関なんだよ。だからこそ、オフィスを自宅にしないのであれば、本店所在地をどこにするかによって取引する金融機関が変わってくる。金融機関によっては創業融資に消極的なところもあるから、融資額や、そもそも創業融資してくれるかどうかも変わってきてしまうんだよ。
なるほど。では、いったい本店所在地をどこにすればより多くの創業融資が見込めるのでしょうか?
私の経験では、東京で言えば西側、いわゆる三多摩地区が積極的に創業融資を行っている印象です。
東京23区は大企業が多く、ビジネスも活発なので、ある一定の規模感をもった元気な会社と積極的に融資取引をしていきたいという金融機関が多い傾向にあります。
なるほど。大企業が多いから金融機関側も融資先を選んでいる傾向があるということですね。
そうだね。創業間もない会社は倒産のリスクも高いから、金融機関側としても融資先としての優先度が下がってしまうという訳なんだ。
では、三多摩地区は東京23区と比べ大企業が少ないから、金融機関側としても創業間もない会社への融資も積極的にやらざるを得ないということですね。
そういう事。三多摩地区で「ある一定の規模感をもった元気な会社と取引していきたい」なんて言っていたら取引企業が無くなってしまうからね。そういった大企業が少ない地区は積極的に創業融資に取り組んで、企業の成長を応援してくれる傾向にあるんだよ。
ですから、これから創業しようと考えているのであれば、まずは「本店所在地は東京23区のど真ん中」という選択は避けた方が良いかもしれません。
今のお話をうかがっているとそれがいいかもしれませんね。確かに「会社を立ち上げるぞー、それオフィスは新宿だ!六本木だ!渋谷だ!」といきなりハードルを上げるよりも、そちらの方が堅実な感じがします。身の丈にあったというか…。
そうですね。財務的に見れば立地よりも、創業時はより多くの融資額を得られることや、しっかりと成長を応援してくれる金融機関とつながるということの方が大事です。まず創業時は、本店所在地を東京23区以外にして、会社のステージに合った金融機関(創業時で言えば信用金庫)からより多くの保証協会付融資をうけ、成長に応じて地方銀行からプロパー融資を受けるようにしていく、そして財務が盤石になった段階で本店所在地を東京23区にする、という流れも選択肢の一つとして考えてみてもいいと思います。
オフィスが東京23区にあるのって、創業者にとってみれば理想だと思うんですが、実際は理想と現実って違うんですね。
本日のまとめ
- 本店所在地を自宅以外にする場合には、その場所をどこにするかが創業融資に大きく関係してくるため重要。
- 創業融資は日本政策金融公庫の「新創業融資」と保証協会付融資の2種類があるが、保証協会付融資の可否は本店所在地によって大きく変わってくる。
- 東京23区は大企業が多いので、金融機関も創業融資には消極的。そのため本店所在地は、東京23区以外の創業融資を積極的に行っている地区にすべし(例:三多摩地区)